Spin-off Raid1.0『絶アルテマウェポン破壊作戦』を終えて
- lunariagrace17
- 8月10日
- 読了時間: 28分
更新日:9月23日

チーム初のスピンオフレイド『絶アルテマウェポン破壊作戦』、2025年7月27日に初クリアを達成。8月8日には予定通りの4週で、合計10本の武器周回も終えることができました。
攻略開始からクリアまであっという間の二週間。事前の準備や予習がとても濃厚だったので、三か月くらい遊んでいるような感覚にもなりましたし、終わってしまえば「もう終わり?!」と感じるほどの短い時間にも感じました。
お互いのことを良く知ったメンバー4人と、見ず知らずのパートメンバーさん4名でスタートしたスピンオフ。初日はとても緊張しました。自分の中では「楽しく笑って」「クリアを目的とはしない」というチームのスタンスを維持しつつ、けれども、そんなことは外部から来てくださっているパートメンバーさんにはあまり関係ない、ということも踏まえつつ、両者のバランスを取るにはどうすればいいか? と考えながらプレイしていました。
■ 指摘のないレイドコミュニティは良い場所? 悪い場所?

結果、それがうまく融合できたのかどうかはわかりません。けれども、クリア後には、「高難易度レイドなのに、ミスをしてもなにも言われない、指摘されない、怒られないコミュニティがあることにびっくりしました。とても楽しかったです。」と、お褒めの言葉をいただく場面もありました。
それとは反対に、「蒼井さんがとても優しい人で……。なにも指摘されることがなかったのが逆に不安になるくらいに優し過ぎて……。アルテマくらいの難易度ならそれでも良いとは思うのですが、第2弾の絶アレキサンダー以上になっていくと、その優しさが、逆にデメリットにならないか不安です。」というご意見をいただくこともありました。
実は、スピンオフ前から常々私が考えていて、今回のレイドで試してみたかったのは、チームの目的である「楽しく笑ってレイド」を達成するためにはどうすればいいのか? それには、無駄な指摘を極限まで削減しながら、とにかく笑うこと・楽しむことに集中するべきではないのか? というものでした。そして、絶アルテマくらいの難易度であれば、無駄な指摘などしなくても、各メンバーがそれぞれしっかり予習や復習をしてくれさえすれば、それは結構簡単に達成できると確信していました。
そして、私の試験的な試みは、70%くらい達成できたと自己評価しています。
■ 予習さえできていれば「指摘」はいらない

事実、クリア済の方が複数いる状況もあって、二週間の攻略期間でメンバー誰かのミスを指摘する必要性のある場面はほとんどありませんでした。(本当はそうするべき場面もあったのですが、ローザと相談して、あえてなにもしないことを今回は選択したのです。そのほうが、ローザの成長につながると思ったので。)
FF14のレイドは基本的に、プレイヤー8人それぞれに求められる動きは決まっています。タイムラインに合わせてギミックを回避しながら、適正で効率の良いスキル回しを行い高いダメージを与えて、制限時間内にボスを倒す。たったそれだけです。しかも、今は動画サイトが充実しているので、先行者の動画をみれば、クリアに必要な答えは大半以上が手に入る時代です。
そんな環境下で、「攻略中、ミスをしたメンバーに指摘をする必要がどこまであるのか?」という疑問を、私は常に持っています。ギミックの理屈と解法を、予習でしっかり把握・理解してしまえば、誰かがミスをするたびに指摘するなんて不要では? と考えているのです。
動画をみて答えを理解しているのなら、ミスをした本人が、ミスの原因を一番理解していなければいけませんし、理解できていて当たり前です。その状況で、周りから「●●さん、ミスしてますよ。」という指摘をされても、気持ちが落ち込むだけ。なにも建設的なものは生まれませんし、楽しさや笑いは、コミュニティからどんどん遠ざかるばかりです。
■「指摘」という言葉には傲慢な臭いがする

もちろん、他人が作った動画をみるだけでは、コンテンツの解法すべてを100%手に入れることはできません。だからこそ、自分たちで繰り返し失敗しながらも練習して、少しずつ理解して、お互いにわからないことを「共有」したり、誰かが苦手なところや理解が乏しい部分を、理解できるように「説明」していけばいいだけです。そこに「指摘」は必要ありません。
ONE FOR SEVENの基本的な考え方は、『FF14のレイドにおいて、無駄な指摘や叱責は他人の能力を向上させない。むしろ、仲間のモチベーションやポテンシャルを下げ、楽しさや笑いを削ぐデメリットが大きい』というものです。
「さあて、これから頑張って夏休みの宿題を頑張るぞー!」と意気込んで机に向かった小学生が、お母さんから「早く勉強しなさい! 」と怒られ、一気にやる気がなくなるあの現象に似ているかもしれません。
私は、『指摘』という言葉には、どこか感情的で攻撃的な臭いを嗅ぎ取ったり、「完璧にできているオレサマが、全然できていないお前に教えてやるよ」といった、上から目線の傲慢な雰囲気を感じてしまうので、FF14のレイドを楽しむうえでは、あまり使いたくない言葉だなと思っています。
それに、どれだけ上手なプレイヤーも、ミスやワイプは必ずあるのですから、高難易度を楽しく笑って遊ぶためには、人のミスより、常に自分のプレイ向上に意識を向けられる謙虚さが必要だと思うのです。
■ 必要なのは「指摘」ではなく調整・相談・確認

先にも書いたように、FF14の高難易度レイドは、8人のプレイヤーが、バトル設計者の決めた通りの動きを完璧にトレースすればクリアできるというだけの、単調でつまらないものです。だからこそ、みんなで笑って楽しく遊ぶためには、ゲームの内容がどうこうよりも、集まる人たちの成熟さや人間性が大切なんです。
そんなつまらないレイドのクリアに求められる要素は以下の3つしかありません。
ジョブの最適なスキル回しを覚える、極める(木人を叩く練習)
動画で予習したり録画で復習したりしてギミックの理屈をしっかり理解する
8人の練度がクリア水準に達するまでひたすらレイドで練習する
もちろん、予習動画を一度や二度みただけでは理解できないことはたくさんあります。実際にプレイしてみたり、自分の動画を何度も見直していくことで、「あー、ここはこういう理屈なのか!」とわかってくることもたくさんありますから、そのわかったことをまたみんなとの練習時間に実戦投入していく。この繰り返しです。
その過程で必要なのは「指摘」ではなくて、
バーストはどこで合わせます? 等の「調整」
ここって火力抑えたほうがよさそうですね等の「相談」
このギミックの解法ってこういう理解であってますかね? 等の「確認」
です。
こういったプロセスには無駄な感情が含まれていないので、これさえ協調的にできれば、ギスギスすることなくクリアできます。苛立ちや他責志向などのネガティブな感情は、楽しく笑ってレイドをするためには不要です。
(FF14には、自分が他人よりも優位に立たないと気が済まない人が多いので、これができない人が非常に多く、自分もまともにできていないのに、他人には偉そうに指摘を繰り返してしまう人がとても多いです。)
逆に、ワイプするたびに、ミスした人に指摘やお説教をする人が一人でもいれば、ミスした本人が嫌な気持ちになるのはもちろん、ミスしていない周りの人でさえ、「(まーた、長々始まったよ……。)」と辟易としたつまらない気持ちになってしまうでしょうし、そんな場所で長く遊びたいと思う人はいないはずです。
「楽しく笑ってレイド」なんて、到底無理です。
■ ミスをしても怒られないという心理的安全性

楽しく笑ってレイドを遊ぶためには、心理的安全性も不可欠です。
どれだけゲームで失敗してもワイプさせても、「このコミュニティでは怒られることがない」「みんな、自分のことを許して受け入れてくれるんだな」 という安心感を感じられる環境はとても大切です。人は、リラックスした状態でプレイしなければ、100%のポテンシャルを発揮することはできませんからね。
繰り返しになってしまいますが、些細なミスでも毎回尋問のように問い詰められるようなコミュニティでは、「あぁ、また今日も固定活動か……。嫌だなあ……。行きたくないなあ……。」と思う人も少なくないはずです。
人にはそれぞれ価値観があるので、誰がどういう場所を作り、どういう場所で遊ぶかは自由です。どういう遊び方も、私には否定する権利がありません。ただ、私は、そういうギスギスした雰囲気の場所では遊びたくないし、一緒に遊ぶ仲間や友人をそういう気持ちにさせたくもないと思っている、というだけです。
もちろん、速度や効率よりも、楽しさを優先するレイドコミュニティでは、一般的な攻略よりも時間がかかってしまうことは確かです。それでも、ONE FOR SEVENは、楽しく笑ってレイドをする! という目的を妥協することは今後も一切ありません。
■ プロの取り組みとアマチュアの遊びは違う

誰よりも最速でレイドをクリアしたいという欲求をもった人たちが集まるレイドレースや、最短クリアという利害やアイテム取得という物欲だけで一時的につながる、「固定」と呼ばれるレイドコミュニティには、ある種プロスポーツのような側面があるので、できない人を強く叱責して、短期間で無理やりにでもできるようにさせる必要があるのは理解できます。
そうしなければ他のチームに負けてしまいますし、短時間でのクリアは無理でしょう。だから、そういう環境においてメンバーのミスをひとつひとつ細かく指摘して改善させようとするのは最適だと思います。多くの場合、レイドレースに取り組む人や固定コミュニティに集う人たちが目的としているのは、過程を楽しむことではなくて、他人に勝つことや「クリア」という個人の利益や結果を得ることですから。
プロスポーツでトップを目指すような選手は、本当に厳しいトレーニングを積みます。チームメイトや先輩からの厳しい叱責や罵声、コーチや指導者からの怒号は当たり前だし、なかにはトレーナーから暴力まがいの仕打ちを受けてでも、厳しいトレーニングに耐えて能力を上げ、やがてはのし上がって一位やチャンピオンになりたいと思う選手も少なくないといいます。
こういった特定のケースでは、厳しい指摘が有効であるというのは事実です。
けれども、それが必ずしも趣味のゲームコミュニティでも同じように活用できるのか? といえば、私はそうは思いません。プロスポーツの世界で有効だからといって、「楽しく笑ってレイドをしたい」という趣味の集まりで確実に最適化できるかといえば、そうは思いません。(これを「外的妥当性が無い」といいます。)
プロスポーツにおける指導は、基本的に対面で行うものです。コーチやトレーナも、多くの場合、その世界で実績や実力、名声のある方がなることが多いでしょうから、それに従う選手の側も、指導者に対して敬意や尊敬、リスペクトがあるわけで、だからこそ厳しい指摘や指導が成立するわけです。しかも、勝てば大金や名誉が手に入るスポーツだって多いわけですから、多くの選手は必死でしょう。
けれども、趣味で遊びのゲームコミュニティに集まる私たちは、あくまでも対等な立場の仲間であり友人のようなもの。しかも、多くの場合はオンライン上で、相手の顔も素性もわからない関係性です。ODE(Online Disinhibition Effect)による気安い心理性も多分に働きます。そんな間柄で、(たとえ、過去のレイド実績に多少の違いはあったとしても)上から目線の指摘や暴言、罵声などを相手に放ってしまったら、関係性があっという間に崩れて楽しさが失われるのは当たり前のことです。
ONE FOR SEVENは、クリアを(目的ではなく)目標としている趣味の集まりであって、プロチームや営利団体ではありません。チームの目的は、飽くまでも「みんなで楽しく笑って遊び続ける」こと。これからメンバーになってくださる皆さんには、そこを勘違いしてほしくないなあと思っています。
■ 早くクリアする必要性はあるのか?
~『結果』ではなく『過程』を楽しむメンタリティが大切~

一般的、平均的、典型的なFF14プレイヤーの価値観のひとつに、「人より早くクリアしたほうがすごい」というものがありますが、私にはこの優位性がいまいちよくわかりません。
確かに、ゲームプレイを生業としていて、他人との勝敗を競いながら金銭や収益を得なければいけないような人たちにとっては、他のチームよりも早くクリアすることが一定の価値につながるのは理解できます。けれども、その優位性が、アマチュアの私たちのようなプレイヤすべてに必ず当てはまるかといえば、そうではありません。
むしろ、プロゲーマーなんて少数ですから、「早くクリアすること」の優位性はとても限定的です。特に、日常の趣味としてFF14を遊んでいる私たちのようなアマチュアが、なぜそんなに生き急ぐように「早くクリア」することにだけ執着しなければいけないのでしょうか。
吉田プロデューサーも、過去の14時間生放送中に、「皆さん、なぜそんなに早くクリアしたがるんですか?」と疑問を呈する場面がありました。その優位性を科学的に立証できた話を、今のところ私は見たことがありません。
(吉田P「周りがクリアしているっていっても、比較しなければいい」というのも、本当におっしゃる通りです。完全に同意します。)
吉田プロデューサーは、FF14はFINAL FANTSYのテーマパークだとおっしゃいます。
たとえば、ディズニーランドに遊びに行ったときに、「一分一秒でも早くアトラクションやショーや食事を済ませて、とっととこの場から立ち去りたい。早く帰りたい」という人はあまり見たことがありませんよね。大好きな家族や恋人、友人たちと一緒に遊びに行っているなら、もっと長く、ゆっくりこの空間を楽しみたいと思うはずです。
私たちONE FOR SEVENは、そういう価値観を主軸に運営しながらFF14を楽しんでいます。
どれだけ困難なレイドも、大好きで仲の良い友人たちと一緒なら、もっと一緒に長く遊んでいたいと思うはずです。事実、私たちはこれまで「異聞アロアロ島 零式」などを、それなりに長い時間をかけて攻略した過去がありますが、クリアまで長くかかったからといってギスギスすることはありませんでした。むしろ、「なんだ、もう終わっちゃうのか……。寂しいな。」と思ってしまったくらいです。
それだけ、気の合う仲間と過ごす楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまうんです。(学校や塾のつまらない退屈な授業の1時間は永遠とも思えるくらいに苦痛でも、心の通じ合った恋人や友人たちと過ごす12時間のディズニーランド滞在は、あっという間に閉演時間が来てしまい、もっと一緒に居たいのに!と感じるのと一緒です。)
「絶や零式をディズニーランドと一緒にするな!」
という声も聞こえてきそうですが、私はなにも変わらないと思います。
お金を稼ぐことだけが目的の仕事や職場は、そこに嫌いな社長や上司、ムカつく同僚や後輩がいれば、きっと毎日行きたくないし、行ってもその一日は長いし、苦痛だし、楽しくないですよね。でも、会社や職場は、お金を稼いで売り上げをあげるという『結果』や『成果』を求めるだけの場ですし、「人を雇って規模を拡げて利潤を増やしたい」という経営者の利益と、「自分の時間を切り売りして生活をしていかなければ」という労働者の利害関係が一致しているから、辛うじて運営できているわけです。お金が入らなくなれば会社はあっという間に倒産しますし、給料がもらえなくなったら、労働者はすぐに辞めてしまいます。
それと同じで、どれだけ楽しいはずのディズニーランドも、どれだけ美味しいレストランも、嫌いで苦手な異性と一緒にいったら、「あ~つまらない、苦痛! 早く帰って眠りたい……!!」と思うのも当たり前です。
いわゆる、利害でつながる「固定」と呼ばれるレイドコミュニティもそれらと同じようなものです。「早くクリアする」という目的や利害が一致しなくなれば、あっという間にギスギスして崩壊するなんて、良くある話ですよね。
「別にこの人たちのことは好きでも嫌いでもないけど、このコンテンツをクリアしてアイテムと実績が欲しいから……」
そう思いながら、他人と利害関係だけで繋がって攻略するレイドは、きっとつまらないでしょう。嫌な人がたくさんいるパーティで遊んでいたら、毎回遊ぶのが苦痛にもなりますし、クリアだけを目的としながら嫌々参加しているから、早くクリアして解散してその場から立ち去りたいと思うわけです。
そういう遊び方を否定するつもりはありませんが、これは私は、せっかくの趣味なのにもったいないなと感じます。
私たちONE FOR SEVENのようなスタンスだったら、どんなに辛いことでも、好きな人と一緒に取り組んでいれば楽しいし、あっという間に時間が過ぎてしまうんですよ。(それを他人に押し付けることもしませんが。)
クリアという『結果』より、「楽しい人たちと笑って遊ぶ」という『過程』を楽しむ利点は、そういうところにあります。
これは、趣味を心底楽しむうえで、とっても重要なこと。
早くクリアする必要なんて、まったくない。
それが私たちの考え方です。
■ 正しさよりもタイミングが重要

指摘や助言、アドバイスというものも、正しければ良いというものでもありません。これを理解していない人が非常に多いです。
ゲームでもスポーツでも仕事でも、正しいアドバイスだからといって、それを相手に伝えるタイミングや表現方法を間違ってしまっては、絶対に伝わりません。それどころか、相手に嫌われて関係性が終わってしまうことも多いです。そういうご経験、ありませんか?
必ずしも正論や正しさで動くとは限らないのが、人間心理の複雑で難しいところです。
どれだけ正しいアドバイスでも、尊敬する先輩や大好きな恋人から言われれば素直に聞き入れて改善できることでも、大嫌いな相手や見ず知らずの他人から言われたら受け入れる気も起きないのは、簡単に理解できますよね。
なのに、相手との関係性がしっかりとできていないにも関わらず、すぐに正しいことを直球で投げて、相手を不快にする人って多いです。そういう人って、相手の気持ちを理解することができず、自分のことしか考えていないからそうなるんです。
なぜかというと、(すべてのケースが必ずしもそう、というわけではありませんが)、「自分は人よりも劣っている」という深刻な劣等感を心の奥底に持っているからです。そういう人が、他人の気持ちや表現方法、タイミングを考えずに正論だけを一方的に振りかざして、人間関係の軋轢やトラブルを起こすこと原因になっている。そんなことが、世間のあらゆるコミュニティで起きていて、社会的にも問題視されています。
劣等感の強い人は、状況やタイミング、話し方や伝え方などを一切考えず、とにかく相手が知らないことや間違っていることを、ビシバシと正論めいた言葉(結構間違っていることも多い。)で投げつけて、「オレはお前よりも経験があるし、知識や情報をもっているからすごいんだぞ! どうだ! だから従え!」という幼稚なマウントを取ることで、自分の心のすきまを埋めることを目的としています。そういう人にとって、他人に助言をするという行動の動機は、相手を良くしたり、状況を改善することが目的ではありません。自分をなぐさめ満足させることなんです。相手のことを思いやっての行動ではないから、相手に嫌われ、トラブルになります。
本当に良い助言を適切なタイミングでできる人は、そういうことは絶対にしません。
関係性をしっかり築いたうえで、相手が助言を受け入れる心の準備ができたタイミングをしっかりと見計らってから、適切な表現で伝える。(レースやプロスポーツの世界では、そんな悠長なことを言ってられない場面も多いので、この限りではないことも多いですが、あてはまる場面も結構あります。)
自分よりも経験の少ない初心者・ビギナーにまともな助言や指導ができない人は、心のなかに赤ん坊と同じレベルの自己中心的な考え方や深刻な劣等感をもっています。そういう人は、必ずどこかで人間関係のトラブルを生み出し、仲間に不快な思いをさせますので、うちのチームでは参加をお断りしています。
■「練習しろ!」と指摘をされている時点で二流

「そうはいっても、ちゃんと練習しないと絶や零式なんかの難しいレイドはクリアできないよ!」と思われる方も多いでしょう。
おっしゃる通りです。私も、「趣味で遊びのゲームなのだから、練習なんてしなくていい」とは思いません。どんなジャンルでも、難しことを達成するためには、メンバー全員が一生懸命練習して、個人のスキルを最大まで上達させておくことは必須です。
FF14は野球と似ています。一見、8人で協力しながらプレイする団体競技のように見えますが、実際は、誰かひとりでもミスをすれば即座にワイプ。誰もフォローすることができないバトル設計なので、案外、個人競技の側面が強いと考えています。
少数のベテランが数人いたところで、その他がずぶの素人だったら絶対にクリアできないようになっています。予習・復習はもちろん、木人練習だって孤独にひとりで行うものですから、攻略時間以外で、個々人の努力や研鑽が強く求められるのは確かです。
「固定」と呼ばれるレイドコミュニティでは、「●●さん、練度が低いのでもっと野良で練習してきてください」と、強い「指摘」がなされることも多いと聞きます。
ただ、こういう話を聞いて毎回私が思うのは、まったく別の観点です。
自分が好きで選んで遊んでいる趣味なのだから、本来であれば、他人からとやかくいわれなくても練習しているはずです。他人から「練習しろ!」と言われてしまうくらい練習を本当にしていないのだとしたら、その人はレイドプレイヤーとして二流三流だし、そもそも高難易度レイドに参加する資格はないと思うのです。
(もちろん、ちゃんと練習してちゃんとプレイできている人に対して、個人の怒りや憎しみ、日常のストレスを解消するために因縁や言いがかりをつけて「練習しろ!」とがなり立てている人もいますので、その場合は、そちら側の人間性に問題があります。そして、そういう人に限って、自分がミスをしたときはだんまりで謝罪もできない、というのも典型例ですので、事例をしっかりと分別して考える必要があります。)
昔、うちのチームにも、私から何度も「練習しなさい」と言われないと練習しないビギナー女子が所属していました。彼女は私やローザの自転車時代からの友人で、ゲームは完全に未経験。私たちに誘われてFF14をはじめただけの初心者でしたから、本当は内心、嫌々でFF14を遊んでいたんでしょう。
休日の朝となれば、自分の本当に好きなアウトドア系の趣味に時間を割いてしまって、FF14に触れる時間は限られていました。だから、上達するものも上達しない……。そして、夜の活動時間に、みんなから「もっと練習したほうがいい」と怒られてしまうわけです。
反対に、私は子どもの頃からの根っからのゲーマなので、誰から指摘をされずとも、自ら望んで朝早く起きて、木人を叩いたり、コンテンツにINしたり、予習・復習をしたり、チームの運営に関することに取り組んだりとするわけです。彼女のプレイ時間と比較したら、2倍から3倍はFF14に触れています。そこに「嫌々やる」という感覚はありません。自ら望んで、能動的に楽しんで行っています。
「練習しろ!」と指摘されて、嫌々、渋々、仕方なく練習をする受動的な人は、誰から指図されなくても、楽しく遊べてしまう人(もっといえば、ゲームをプレイしないではいられないレベルの人)には絶対に勝てません。しかも、私と彼女では、過去の経験量が何百倍もあるので、差はどんどん広がるばかりです。
幼少の頃から楽しくゲームを遊んできた人には、FF14のプレイは日常の習慣でしかなく、そもそも本人はそれを練習とさえ思っていません。楽しく遊んでいるので、能力はぐんぐん伸びます。
反対に、子どもの頃からゲームなんて一切遊んでこなかった人が、30歳過ぎて無理やりやらされた趣味の練習は苦痛でしかなく、どれだけやっても、楽しんでいないので能力はなかなか伸びません。
『三つ子の魂百』までといいますが、趣味においてもまったく同じことがいえると思います。スポーツの世界だって、3歳から英才教育を受けて育った二十歳の選手に、高校生になってから練習を始めた選手がなかなか能力が追い付かないのと同じです。
また、先にも書きましたが、趣味のゲームにおいて、相手の気持ちや立場を考えない一方的な「指摘」は、相手の能力を根本から向上させることはほぼありません。
だから、そういう意味でも、練習しない人に「練習しなさい」という「指摘」は必要ありません。そんな言葉は無駄です。言っても人はそう簡単には変わりませんから。
上手い人・上手くなる人は、人から練習してこいと言われる前から、常に練習しています。というか、それを練習とも思ってもいません。ただ習慣的に遊んでいるだけです。
「練習してこい!」といわれなければ練習できないレベルの人に必要なのは、「指摘」ではなく「除名」だと言い切ってしまう私は、それでも優しいですか?笑
■ 頑張らないほうがうまくいく(レイドを神格化しない)

私がお会いしてきた限り、ゲーマーと呼ばれる皆さんの多くは、基本的に真面目な方です。一般的に、ゲームというものは精密なロジックで組まれていて、正解が明示されているものなので、日々そういった趣味に触れていると、プレイする側も折り目を正して遊びたくなる性格になるのでしょうか。
真面目であるのはとても良いことなのですが、なにごとも『過ぎたるは猶及ばざるが如し』です。真面目を通り過ぎて「生真面目」なレベルになってしまうと、すべてのことをきっちりかっちり決めなければ気が済まない、柔軟性を欠いた堅苦しい人間になってしまいます。
バーストはここでしっかり合わせて……、
軽減表を作って完璧にダメージを管理して、
装備はサブステ1でも無駄にせず……、
回しはDPSを少しでもあげられるように……。
生真面目に、すべてをミリ単位で厳密にこだわろうとすれば、いくらでもこだわることができるのがFF14の良いところ……。自分の範疇だけでとどめられるならそれも良いでしょう。
けれども、FF14はMMOなので、個人の生真面目なこだわりを他人に求め出したら危険信号です。
あー!! バーストがずれた!
おいおい! 軽減が決めた通りに入ってないじゃないか!
そんな弱い装備でいいんですか?! DPS出ませんよ!
スキル回しが間違っていますよ!
これじゃあDPSチェックが越えられない!
色がつかない!
ボスが倒せない!
クリアできない!
アイテムが手に入らない!
ムカつく!
腹が立つ!
自分はここまで完璧にこだわって遊んでいるのに、みんながそれに合わせてくれない!
自分は完璧に動けているのに、あいつがミスするから全然クリアできない!
あーっ!! イライラする!!!
そんなことばかりしていると、最後は、
「なんかさー、あの人いっつもイライラしてるし、細かくてうるさいし、小言しか言わないし、こだわり強いし、気の利いたジョークもギャグも言えないし、つまらないから一緒に遊ぶのやめてあっちに行こうぜー」
と、どんどん周囲から人が離れていってしまいます。
楽しむはずのゲームでストレスMAX!
仲間からも見捨てられて不幸の連続。
まさに地獄絵図ですね。笑
(そんなにイライラするならMMOなんてやめちゃえばいいのに、と思います。)
多くの人は、「堅くて真面目で、きっちりかっちりしていたほうが強くて優秀」と思い込んでいますが、それは間違いです。堅いものは、ちょっとした衝撃で簡単にぽっきり折れて、すぐに使い物にならなくなってしまいます。
それよりも、「テキトーでふにゃふにゃなほうが、実は衝撃にも強くて優秀」なんです。
生真面目なプレイヤーさんは、事前になんでもきっちり・かっちり完璧に決めて、常識やルール(結構間違っている)に従うようにレイドを攻略しようとすることが多いです。確かにFF14のバトルがそういう精密で緻密な設計なので、遊ぶ側が心理的にそうやって構えてしまうのもわからないではありません。
でも、ONE FOR SEVENでは、頑張りすぎないテキトー力を大切にしています。
軽減? そんなの最初はテキトーでいいよね。
バースト? そんなのとりあえずテキトーに合わせてみればいいよね。
という感じ。
もちろん、すべて最初から最後までテキトーにすればいいというわけではありません。
ただ、最初から何でもかんでも決めごとばかり作っていたら、それこそ遊びがなくて楽しくないなー、と思います。バトル設計がガチガチなのだから、それを遊ぶプレイヤー側くらいは、少し遊びがあってもいいのではないでしょうか。
予習をしてギミックの基本的な理屈を論理的に理解することはとっても大切です。けれども、バーストも軽減もスキル回しも、攻略を進めていくうちに困ったり、詰まったりしたらそこで初めてみんなで相談しながら決めていけばいいのです。最初から完璧に決める必要はありません。レイドには、やってみなければわからないことがたくさんあるからです。そういうのをみんなで少しずつ決めていく過程もまた、オツで楽しいものです。
「いやいや蒼井さん、絶や零式はそんな甘い考えじゃクリアできませんよ!」
過去にそう脅されたこともあります。でも、実際は結構テキトーでも絶アルテマウェポンは簡単にクリアできたわけです。指摘も準備もほとんど必要ありませんでした。頑張ったのは予習だけです。
そうやって、絶や零式のような高難易度レイドを過剰に神格化して「怖いぞ」「難しいぞ」「大変だぞ」と他人を脅す人は、ゲーム以外に人に誇れるものがまったく無くて、日常に虚無感や劣等感を感じているのでしょう。(すべての人がそうではないですけれど。)
「レイドは難しくて大変でなければいけない! なぜなら自分はそうやって苦労してギスギスに耐えながらも、多くの人がクリアできない難しいバトルを制したのだから! テキトーなお前たちに、テキトーに攻略されて、しかも楽しく笑ってクリアされたら困るんだ! オレサマの立場がなくなるじゃないか! オレサマは、多くのライトプレイヤーがクリアできない困難な絶や零式をクリアすることができた、優れた人間なんだあーー!」という、なにかに怯えているような極端な意見をもつ方とも、過去に実際、お会いしたことがあります。
職場とかにもいるじゃないですか。別に大した仕事じゃないし、誰にでもできる簡単な業務なのに、「この仕事はオレサマ以外の人間には務まらない!」なんていう顔をする人。そういう人って、別に能力が優れているのではなくて、ただ単に必要な情報を隠して共有せず、意図的に他人が介入できないように聖域化。「自分にしかできない仕事があるんだ!」っていう状況を演出しているだけなんです。そうすれば、同僚や上司、後輩や先輩から頼られますし「自分はすごいことをやっている!」っていう幻想で自己陶酔できる。そうしていると、つまらない仕事で自分の劣等感や心の穴を埋め合わせることができますからね。
でも、この世に存在する仕事のほとんどは誰にでもできるようなものだし、仮にあなたが職場からいなくなっても、三か月もすればそれを遂行する替わりの人は出てくる程度のものです。だから、本来仕事なんて、業務に関する情報はすべてオープンに共有して、いつ自分が死んでも会社の人たちが困らないように均しておくべきというのが私の考え方です。でも、劣等感がある人は、自分にしか仕事ができない状況にすることで、周りから頼られて心の穴を埋め合わせたいだけなんです。
私は、そういう堅苦しくて卑屈で傲慢な考え方ってつまらないなあと思いますし、そういう劣等感とかを持っている、心に余裕や遊びのない、ゲームしか能のない人とは一緒に遊びたくありません。
FF14のレイドだって、所詮は誰にだってできる、簡単でつまらない、平凡で退屈なものなんです。それをわざわざ神格化して、「高難易度を早期でクリアしている自分は周りよりもすごい!」と思うことで、フレンドさんにマウントを取ったり、傲慢な態度を取ったり……。
ゲーム以外にも他人に誇れるものがあって、日常に幸せを感じている人は、そういう幼稚な態度はとりません。
老子や老荘思想の通り、努力すればするほどうまくいかなくなる。
テキトーに脱力していたほうが、案外、ものごとは上手くいく。
こういう老荘思想や老子的な考え方って、なにも知らない人からすると、一見、うまくいかないようにも見えるし、負けているようにも見えてしまうんです。だから、古の考え方をきちんと勉強して深く理解して、頭や心にインストールしていない人は、どうしても現代風味の考え方に染まってしまって、不安になって、無理に頑張り過ぎちゃうんですよね。で、結局うまくいかずに終わってしまう。
でも、最後の最後は、無茶苦茶頑張っている人より、テキトーな人たちの方が結果的にうまくいくんです。
今回の絶アルテマウェポンも、大した打ち合わせもせず、指摘もせずテキトーに楽しく遊んでいたら、最後はみんな動きがしっかりしてきて、10回もクリアすることができました。
FF14のレイドなんて、所詮はそんな程度ものですよ。
青筋立てて、目を三角に釣り上げて、イライラしながら遊ぶものではありません。
楽しくテキトーにやりましょうよ。
■ 指摘が必要な場面もある

もちろん、だからといって、私はメンバーに何も指摘しないかといえばそれは違います。
ゲームの攻略についてはあまり細かいことはいいませんし、ミスをした人を怒るなんてしません。けれども、人間的に問題があってコミュニティをギスギスさせてしまったとき、もしくはその可能性があった言動に対しては、厳しい指摘をすることもあります。
なぜなら、人間性や性格は、ゲームのギミックとは違って、ネットで調べて予習しても簡単に身に就いたり、改善できたりするものではないからです。それに、人間は誰しも自分の人格や性格の問題点に気づいていないことがほとんどで、むしろ問題のある人ほど「自分は能力の高い人格者である」と勘違いしているケースが非常に多いですから、それを改善させるためには、本人と周囲の莫大な努力はもちろん、専門的な知識や情報、経験に基づいた『指摘』や『指導』『助言』が必要です。
高難易度のレイドをみんなで楽しく笑って遊ぶって、言葉にするとすごく簡単なようも見えますが、実際は本当に難しいです。
上手くいかないこともあるし、みんなに迷惑をかけることもあるし、体力を使って疲労困憊になるし、睡眠時間も短くなって眠くもなるし、視力も落ちる。そりゃあ、普通の人だったらイライラしちゃいます。
だからこそ、ONE FOR SEVENは、集う8人のメンバーそれぞれが、「思い通りにならないことへの耐性」や「頑張りすぎないテキトー力」を身に着けて、少しずつ成熟した大人になっていくことを大切にしています。
そのためには、
自分を客観的に見つめて弱点を素直に受け入れる
知りえなかった情報に触れて知識を身に着ける
仲間との切磋琢磨、研鑽で自分を高めていく
人から奪う「テイカー」ではなく、仲間に与える姿勢を身に着けた「ギバー」になる
といった努力や姿勢は不可欠です。
これができない人は、必ずどこかで仲間に不快な思いをさせて、ギスギスを生み出す元凶になるので、あまりに改善できない場合は、申し訳ないですが、問答せずに除名します。
コミュニティに集まる全員が成熟した大人の精神をもっていないと、楽しく笑ってのコンセプトは達成できませんからね。
ということで、いろいろと書き連ねてきましたが、
ここまで読んでも「蒼井さんは優し過ぎる」と思いますか?笑
私は、すべて見えている・気づいているけど、あえて言わないだけ。周りにそう思わせない「演技」と「フリ」がとっても得意なんです。ソーシャルエンジニアってそういうお仕事ですから。




